「個性」は大切にすべきである。
人生を歩んでいると時々聞く言葉ですが、
個性ってあまりに解釈が広すぎて、実際どこまでの意味を指している言葉なのか分からない時があります。
何故いきなりこんな話を始めたかというと、
先日私が勤めているお菓子のお店で変わったご意見をいただく機会がありました。
本日は、あまり世の中に無いちょっと変わったクレーム体験をご紹介させていただこうと思います。
何の変哲もない
先にお伝えしておきますが、私はあまり面白い人間ではありません。
普通の髪、普通の服装、趣味無し、友達もおらず…と、
こう書きますとむしろ残念な部類に入るかもしれません。
そんな私は現在お菓子の販売員に従事しており、
毎日毎日アルバイトとしてひたすら売ったり、商品を並べたりと同じ業務を繰り返しておりました。
(…….)
頭の中で何か心配事を考えているわけでもなく、かといって今後の目標があるわけでもありません。
そうですね。
あえて悩みと言えば、悩みが無いことなのかもしれません。
そんな無味乾燥な日々を送っている中、ある時変わったお客様がいらっしゃったのです。
何が変わっているというのは一目で分かります。
紫色の髪形に、手首に付けた沢山のよく分からないブレスレット。
おまけに口紅なのか赤くテカった唇。恐らく男性です。
まぁ…もしかしたら時々道を歩いていればそんな人も見るかもしれませんが
来店されてさすがに自身との距離が近いとなると、その印象が凄まじいものを感じました。
(うわぁ…)
私はちょっと怪訝そうな顔をしてしまいましたが、とりあえず仕事上声を掛けました。
「いらっしゃいませ、本日はこちらのお品物が人気ですよ」
内心困ったような顔をしながら私は声を掛けましたが、
その男の人はニヤッとこちらを見ると、ふと顔を別の方向に向けてしまいました。
(まぁ…色々な個性があるさ…)
私はそう思って、そのお客様と少し距離を取ったのです。
そのお客様は暫く店内を見て回り、ある商品の所で立ち止まりました。
(あれは…)
そのお客様の目に留まったモノ、それは「はちみつ」でした。
因みに私の所属しているこのお菓子屋は、主にクッキーやキャンディーを取り扱っており、どれも会社オリジナルのはちみつを使ったお菓子を販売しておりました。
そして、お客様の目に留まった商品こそ、
クッキーやキャンディーに使われている材料の一部であるはちみつだったのです。
(なるほど。確かにあんな人ならクッキーより健康に良いはちみつに目がいくんだろうな)
そんな風に思っていた矢先のことでした…
突然その運命の出来事は起きたのです。
運命の出会い?
ブレスレットをガチャガチャ付けたその男性からいきなりお声が掛かったのです。
「ちょっとあなた、これをくださる?」
「はっはいっ…」
まずびっくりしたのが、その声質でした。
(おねぇ系かよ…)
ここでは直接の言葉は控えさせていただきますが、
芸能人のIKKOさんだと思っていただければ分かりやすいです。
しかしなるほど。
そう思うと不思議なもので、その立ち振る舞いに加え、何故か堂々しているようにも見えました。人によって個性は異なりますし、見え方も違ってくるでしょう。
私はとりあえず、指定していただいたはちみつを手に取り、会計を始めました。
ギフト用とのことなのでラッピングもします。
「おっお待たせしました!」
結果、少しテンパりながらお品物を無事お渡しすることが出来ました。
それで終わったと思ったのですが、そのお客様はお店を後にせず、
何故か私を見ています。
「あっあの、何かございましたでしょうか…?」
変な日本語を使う私。そしてお客様からの返答は…
「あなた、もうちょっと顔を整えた方が良いわよ。冴えないわ」
(えっ…)
まさかの自身に対するクレームというか注意でした。
「すっすみません…」
私がそう言うと、何故かそのお客様はニヤッと笑ってその場を去って行きました。
(……..)
察していただければ幸いですが、こんな反応にもなるでしょう。
因みに今回の事をお店の店長に伝えたところ大爆笑され、
その日私は一度美容室に行こうと心に決めたのでした。
やっぱり運命の出会い?
そんな出来事が起きた翌日が仕事休みだったので、
何故意地になったのかはさっぱり分かりませんが、少し高めの美容院に行き、開口一番、
「髪型と眉毛をビシっとさせて下さい」
と、私は従業員に伝えました。
その担当の方は少し戸惑っていましたが、とりあえず出来るだけの手入れはしてくれることになりました。
翌日。
私は、お店仲間に笑われました。
「どっどうした….?」
笑いを堪えきれないみたい顔をして尋ねてきます。
「美容院行きました!」
それだけ私は言って、いつもの仕事を始めました。
その時です。
(あっ!!)
何か嫌な予感がしてふと振り返ると、
あのおねぇ系のお客様がちょうど開店時間にお店の外で待っているのが見えました。
(嘘だろ…)
私がそう思っている中、何と開店と同時にそのお客様は私の方に一直線で来たのです。
「いっいらっしゃいませ…この前はありがとうございました…」
お客様はまじまじと私を見ております。
すると…
「いいじゃない」
それだけ言って店内のはちみつが置いてあるコーナーに行ってしまいました。
(…….よかった….)
私は、何故か心の底からホッとしたと同時に、とても嬉しく思いました。
それから私は自らそのお客様の所に行き、いつもと違って生き生きと接客をし、
そのお客様からも「また来ます」と笑顔で言って頂くことが出来たのでした。
個性は色々
以上ここまで、私が体験した変わったクレーム体験のご紹介をさせていただきました。
実はこの後、私はこのお客様と仲良くなり、
お客様が開催しているヨガ教室にご招待していただくことになりました。
ヨガと聞くと男性ではなく女性がするイメージだと思いますが、
男性歓迎のヨガ教室もあるとのことで、私はそのヨガ教室に通うことになったのです。
現在、私の趣味は「ヨガ」になっております。
私にとって運命的な出会いとなったのでした。
diary.st著